ビジネスにおいてボトルネックとは、全体の業務工程の中で業務の停滞や生産性の低下を招いている工程や箇所のことを指します。ボトルネックを解消するための理論としてTOCが挙げられます。TOCでは、ボトルネックを特定して、それに合わせて全体工程を調整することで工程の最適化を図ります。TOCではまず、ボトルネックを特定する必要があります。続いて特定したボトルネックを徹底的に活用し、そのフル稼働しているボトルネックに合わせて全体工程を再設計します。そこから初めてボトルネックの処理能力を向上させます。これにより、全体の処理能力が向上しよりスムーズに処理が行えるようになります。
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業務全体のなかで停滞を招いている工程
ビジネスにおけるボトルネックとは、業務工程全体において停滞や遅延、生産性の低下などを招いている工程や箇所です。瓶の上部は細くなっており、広い部分から狭い部分を通過する際に流れの妨げとなる様子から、瓶の首を意味する「bottleneck」と呼ばれるようになりました。日本語では、物事の進み具合を左右する「律速」と表現されることもあります。ボトルネックは製造業やIT業界、プロジェクト進行などで度々問題となり、業務改善の対象にもなる工程です。
ボトルネックとTOCの関係性
ボトルネックと合わせて頻繁に登場するのが「TOC」という理論です。TOCは「Theory of Constraints」の略で、日本語では「制約理論」などと訳されています。TOCは、イスラエルの物理学者であり、ビジネス小説「ザ・ゴール」の著者としても有名なエリヤフ・ゴールドラット氏が提唱した理論で、制約条件でもあるボトルネックを継続的に改善することで、物事を効率よく進められるという考え方です。生産スケジュールの理論として知られる制約理論は、ボトルネックがラインの全体スケジュールを律する制約条件である、という考え方に由来しています。
ボトルネックが引き起こす問題と原因
ボトルネックが引き起こす問題
ボトルネックが引き起こす問題としては、次のようなものが挙げられます。
- 生産性の低下
工程全体のなかに制約条件であるボトルネックが存在すると、他の工程は生産性が高くても、律速であるボトルネックの工程にスピードを合わせなければなりません。その結果、工程全体の生産性は低下してしまいます。
- 時間の浪費とコストの増加
ボトルネックの工程は余分な時間がかかるため、工程全体のプロセスが遅延し、時間の浪費につながります。作業時間が増えれば追加の人件費やリソースが必要となるため、コストの増加も避けられません。
- 精神的な負担の増加
ボトルネックが引き起こす生産性の低下や時間の浪費、コストの増加は解決が難しいケースも少なくありません。効率を追い求める企業は常に改善を求めるため、関係者の精神的な負担は増加してしまいます。
ボトルネックの原因
これらの問題を引き起こすボトルネックの原因は、以下のようなものが考えられます。
- 人材不足
人材不足はボトルネックの代表的な原因です。本来は十分な人材を投入することでスムーズに進められる工程も、人材不足によって人員を割けず、処理能力不足に陥ってしまうこともあります。また、専門的な知識を持った人材を確保できずに、専門性の高い工程がボトルネックになってしまうケースも少なくありません。
- 業務の属人化
業務の属人化もありがちなボトルネックの原因です。限られた人材に業務遂行を依存すると、担当者が不在のときに作業遅延が生じてしまいます。担当者が独自の手法で業務を遂行しているため、作業手順がブラックボックス化しており、実は作業効率が悪かったというケースも珍しくありません。
- アナログ業務
旧態依然とした組織では、アナログ業務がボトルネックとなっている可能性もあります。例えば、紙ベースの稟議書で意思決定を行っている場合、起案・稟議・承認・決裁のプロセスに膨大な時間がかかるケースも珍しくありません。また、回覧者や承認者、決裁者といった関係者が不在の場合は、意思決定が滞ってしまいます。
ボトルネックの解消法
ボトルネックを特定する
まずは、工程全体のなかでボトルネックとなっている工程を特定します。ボトルネックの特定は、以下の方法で行うのが一般的です。
- プロセスマッピング
プロセスを可視化して業務の流れを明確化し、各工程の状況を把握します。
- データ分析
生産性や作業効率に関するデータを収集し、分析します。客観的にデータを分析することで、停滞や遅延、生産性の低下などを招いている工程を把握することが可能です。
- フィードバック
従業員や関係者からフィードバックを得ることで、現場で生じている制約条件を把握しやすくなります。
ボトルネックを最大限に活用する
ボトルネックを特定できたら、ボトルネックとなっている工程を現状のままで最大限に活用する方法を検討します。そもそも、ボトルネックとなっている工程は本来の処理能力を最大限に発揮できているのか、何らかの障害や不具合が生じた結果ボトルネックになってしまっているのかなどを判断し、生産性を高める方法を検討してください。ボトルネック本来の能力を判断するには、能力を最大限に発揮できた場合のKPIを定め、現状との差分を分析する方法がおすすめです。なお、KPIは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」といいます。KPIは、ゴールに至るプロセスの達成状況を定量的に判断するための指標です。
他の工程をボトルネックに合わせる
ボトルネックの能力を最大限に引き出す体制が整ったら、ほかの工程を律速であるボトルネックに合わせます。たとえ他の工程の生産性はまだ向上の余地があったとしても、あえてボトルネックに合わせて工程全体の最適化を図ることが重要です。全体最適化の作業は、各工程のバランスを取りつつ、組織全体の生産性を向上させる大切な取り組みでもあります。難しい作業ではありますが、ボトルネックを意識し他のプロセスを調整することで、組織の競争力を高めることが可能です。
ボトルネックを改善する
全体最適化が完了したら、いよいよボトルネックとなっている工程を改善します。そもそも、「ボトルネックとTOCの関係性」でご紹介した制約理論は、全体最適化によって余裕が生まれたあとボトルネック自体を改善することで、組織全体の生産性を高める理論です。例えば、全体最適化によって余裕が生まれた工程から、ボトルネックとなっている工程にリソースを再配置することで、処理能力を高めるといった方法が考えられます。また、設備投資によってDXを図り、業務効率化を目指すのも効果的な方法です。ボトルネックの改善には、継続的な取り組みが求められます。新たなボトルネックが発生しないよう定期的にプロセスを見直し、必要に応じて改善策を実行することが重要です。
新たなボトルネックを発見し改善する
制約条件は複数あり、一つのボトルネックを改善して終わりというわけではありません。KPIを定期的に確認し、新たなボトルネックを発見したら同様の手順で改善し続けることが重要です。そもそも、環境の変化などにより、新たなボトルネックが発生することは避けられません。そのため、律速となっているボトルネックは早期に発見し、適切な改善策を実行することで、組織としての競争力や生産性を高め続けることが大切です。TOCのプロセスを繰り返し実行することで、組織の持続的な成長を実現できます。
まとめ
今回はボトルネックについて解説しました。ビジネスにおけるボトルネックとは、工程全体のなかで停滞や遅延、生産性の低下を招いている工程や箇所です。ボトルネックを解消する理論には、TOCがあります。TOCは制約理論ともいい、制約条件でもあるボトルネックを継続的に改善することで、物事を効率よく進められるという考え方です。変化の早い現代において、ボトルネックの発生は避けられません。制約理論に基づき、継続的にボトルネックを改善し続ける姿勢が重要です。