ゴーストワーカーとは、AIを動かすために背後で働いている労働者のことを指します。AIが人間と同じような作業を自動で行えるようになるためには、人間が知識や情報をAIに直接教える必要があり、その役割を担うのがゴーストワーカーです。ゴーストワーカーの仕事内容として、ラベリングが挙げられます。ラベリングとは、ある事象に対し特定の出来事を判断基準として「この人は〜だ」といった評価をAIに教え込む作業です。これにより、AIがデータの識別を行えるようになります。
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AIを動かすために背後で働いている労働者のこと
ゴーストワーカーとは、AI(人工知能)を機能させるために裏で働いている労働者のことです。ゴーストワーカーは、AIにタグ付けやラベリング方法を教える「AIの教師役」の役割を果たします。AIが人間の作業を自動化できるようにするためには、人間の判断基準を教え込み、徹底的にアルゴリズムを訓練しなければなりません。近年では、複数の言語を理解し情報の検索やアプリの操作を音声で行う便利な機能を持つAIが世界中で多くの人々に利用されています。しかし、その背後には、AIが機能するよう膨大な量のデータをひたすらラベル付けする大勢のゴーストワーカーの存在があるのです。
そもそも「ゴーストワーク」とは
ゴーストワークとは、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)とインターネットを利用し、調達からスケジュール管理、出荷、開発まで行う仕事のことです。AIが対応しきれないタスクを人間が処理する目に見えない労働を指す用語で、人類学者のメアリー・L・グレー博士やコンピューター科学者のシッダールタ・スリ博士らが提唱しました。巨大な労働市場であるにもかかわらず、GDPに算入されない家事のように扱われていることから「ゴーストワーク」と呼ばれています。人間が関与しておらず、ソフトウェアのみが自動的に稼働している仕事の大半がゴーストワークです。ゴーストワークは、自動化という理想を実現するために欠かせない労働ですが、表面上は見えないことから十分な評価を得られていないことが課題となっています。
副業として始める人も増えている
ゴーストワークは場所や時間を問わず作業できることから、副業として始める人が増えつつあります。 クラウドソーシングを活用し、短時間や単発で気軽に働ける点も魅力のひとつでしょう。ゴーストワーカーの需要が高まった背景には、多くの企業がAIの開発に乗り出したことにあります。企業は、AIの開発に伴って生まれた膨大な単純作業をコストカットしつつ処理するためアウトソーシングを活用するようになったのです。副業を希望する人だけでなく、障がい者がゴーストワークを請け負う場合もあります。作業の多くは専門的な知識やスキルを必要とせず、誰もが取り組みやすい仕事となっているためです。
ゴーストワーカーの仕事内容
データラベリング
データラベリングとは、画像や動画、音声、テキストなどを識別し、それらのデータにラベル付けを行い、モデルのコンテキストを指定して機械学習モデルに正確な予測をさせる作業のことです。 データラベリングは「アノテーション」と呼ばれることもあります。データラベリング(アノテーション)の具体例は以下のとおりです。
- 猫の画像に猫の種別ごとにラベル付けを行う
- 道路情報の画像の中から背景・道路・乗り物を塗りつぶしてラベル付けを行う
- AIスピーカーに入力された音声から固有名詞だけを拾う
- ニュースサイトにおいて「国内」「エンタメ」「スポーツ」「経済」など、カテゴリごとにニュースを分類する
- SNSの口コミにおいて、良い・悪い・普通のタグ付けを行う
- 動画の各フレームで、人物の関節および骨構造をポインティングする
コンテンツモデレーション
コンテンツモデレーションとは、SNSやECなどのWebサービスにおいて投稿されたコンテンツをモニタリング(監視)し、不適切な内容の投稿の削除やユーザーのアカウントを停止する作業のことです。コンテンツモデレーターは、SNSやECを健全かつ良好な状態に保つ役割を担います。
コンテンツモデレーションでは、「アダルトコンテンツ」「他者への誹謗中傷」「暴力・虐待コンテンツ」「悪意ある商品への口コミ」を取り締まりますが、どのようなコンテンツ・コミュニケーションが適切かはそのサイトのポリシー次第です。従って、そのサイトの目的・ガバナンスに則って取り締まる必要があります。
なりすましの防止
海外では、ライドシェアサービスにおいて、ライブ動画に映っている運転手の顔と事前登録した顔が一致しているかを比較し、オンライン上で本人確認をしてなりすましを防止しています。なりすましの可能性を検知するシステムのうち、アルゴリズムが実行できない仕事をゴーストワーカーが引き受けているのです。
ゴーストワーカーの働き方における問題点
労働法や雇用契約に守られていない
ゴーストワーカーは労働法や雇用契約に守られていないことがほとんどで、発注元の都合で仕事をさせてもらえなかったり、報酬をもらえなかったりする場合泣き寝入りするしかありません。 不安定な労働条件のもと、大勢の非正規の使い捨て労働者がAIの自動化を背後で支えているのです。
大量の単純労働かつ低賃金労働が生み出されている
クラウドソーシング経由で貧困地域の労働者がゴーストワーカーとして働くケースも少なくありません。 米国では、米国で定められた時給以上を稼げる人はほんの一握りだと言われています。しかし、働き方に融通が利くうえ、専門的な知識やスキルを求められないことから、ゴーストワーカーを希望する労働者は後を絶えません。その結果、大量の単純作業を低賃金で働かせる構図が成り立ってしまっています。
労働者が無理を強いられるケースもある
企業はAIの開発やコストカットを急ぐあまり、労働者に無理を強いる場合があります。具体的には、1か月で数万件の画像処理といった過剰発注や、明らかに事実と異なる情報の入力を求めるなどです。ゴーストワーカーは「非正規雇用」「単純労働」「低賃金」といった要素から、単なる作業をする機械のように扱われるケースも数多くあります。
まとめ
この記事では、ゴーストワーカーの概要やその役割、仕事内容について解説しました。ゴーストワーカーはAIを自動化させるために欠かせない存在でありながら、不安定な労働条件のもと、低賃金で大量の単純作業をこなしているのが現状です。企業は、AIの開発過程で見えない労働者に対して十分な配慮がなされているか見直す必要があるでしょう。