ノー残業デーとは?メリットと注意点について解説

ノー残業デーとは、定時で仕事を終えてその日は仕事をしないということを企業が設定する取り組みを指します。ノー残業デーを導入することによって、従業員の心身の健康維持、プライベートの充実や余暇時間でのスキルアップといったメリットが挙げられます。その一方で、終わらない仕事が別日に持ち越される可能性や、残業代が出ずに収入が減ることによって従業員が不満を抱いてしまうといった注意点も挙げられます。

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ノー残業デーとは

残業をせず定時で退社する日を設定する取り組み

ノー残業デーとは、例えば毎週水曜日や毎月5の付く日など特定の曜日や日にちを定めて、特段の事情がない限り定時で退社することを奨励する制度です。ノー残業デーは公的な制度ではなく、会社が任意で取り組む制度であるため、就業規則などに規定を設ける必要はありません。会社全体で導入するケースもありますが、労働形態に合わせて部署・部門ごとに独自の制度を定める場合もあります。当然ですが、ノー残業デーを守れなかったからといって会社や管理監督者、従業員が罰せられるようなことはありません。定時で退社するために働き方を工夫するなど、いわゆる「働き方改革」の第一歩としても注目を集めています。ノー残業デーは、従業員の心身の健康やワークライフバランスの改善、生産性の向上にもつながる非常に重要な制度です。

ノー残業デーが生まれた背景と目的

ノー残業デーの一番の目的は、長時間労働の是正です。従来、労働時間の上限規制はなく、いわゆる「36(サブロク)協定」さえ締結してしまえば際限なく労働者を働かせることが可能でした。高度経済成長時代には、長時間労働を良しとする社会的風潮があったのも事実です。しかし、近年では労働者の過労死やメンタルヘルス不調が社会的な問題となっており、これらの問題への対処として、2019年に施行された改正労働基準法では労働時間の上限規制が規定されました。さらに、公正で多様な働き方を実現するため、国家レベルの取り組みとして「働き方改革」が推進されています。このような背景から、現場レベルで始められる取り組みとして、ノー残業デーが注目されているのです。

ノー残業デーのメリット

従業員の心身の健康を維持できる

ノー残業デーの1つ目のメリットは、従業員の心身の健康を維持できることです。従来は長時間労働が当たり前でしたが、従業員の過労死やメンタルヘルス不調などの問題が表面化したことにより、早急な改善が求められています。ノー残業デーによる余暇時間は一定の休息につながるため、脳心臓疾患やメンタルヘルス障害のリスク低減が期待できるでしょう。厚生労働省の調査では、長時間労働を始めとした過重労働と健康障害リスクとの相関関係を認めています。ノー残業デーによって長時間労働を是正することで、健康障害を一定程度回避することが可能です。従業員は、事業運営に必須のリソースであるヒト・モノ・カネの「ヒト」に該当します。事業を滞りなく運営していくためにも、従業員の健康維持は喫緊の課題です。ノー残業デーは、従業員の健康を維持するための有効な制度といえるでしょう。

プライベートの時間が充実する

ノー残業デーの2つ目のメリットは、プライベートの時間が充実することです。従来プライベートは二の次で仕事にまい進するのが美徳と考えられてきました。しかし、社会経済構造の変化に伴い、現在ではワークライフバランスを重視した働き方が求められています。例えば、家族との時間や趣味の時間などを重視する考え方が若者を中心に一般的となってきました。政府は「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」のなかで、やりがいや充実感を持って働き職責を果たす一方、子育てや介護・家庭・地域・自己啓発など個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、社会全体で仕事と生活の調和を実現しなければならないと説いています。仕事とプライベートの両立を実現する第一歩としても、ノー残業デーは非常に重要な制度です。

余暇時間にスキルアップできる

ノー残業デーの3つ目のメリットは、従業員のスキルアップにつながることです。ノー残業デーは定時で退社できるため、余暇の時間を自己研鑽に充てられます。目まぐるしく変化する情報社会では高い専門性が求められるため、スキルアップは非常に重要です。また、AI(Artificial Intelligence:人工知能)が急速に発達する現代において、人間にはコンピュータに真似できない高度な知的労働が求められています。従業員が高いスキルを身に付ければ、作業品質や生産性は大きく向上するでしょう。ノー残業デーによって余暇時間を作り、従業員のスキルアップを奨励することは、企業価値を向上させる有効な取り組みです。

ノー残業デーの注意点

終わらない仕事が別日に持ち越される可能性がある

ノー残業デーが形骸化している職場ではその本質が忘れられ、終わらない仕事が別日に持ち越される可能性があります。ノー残業デーは長時間労働の是正およびワークライフバランスの改善が本質的な目的であるため、これでは本末転倒です。ノー残業デーを導入する場合はその趣旨を十分周知し、「残業せずに仕事を終えられるよう工夫をする」という意識を醸成する必要があります。また、企業は制度を導入するだけでなく、問題なく運用できるよう管理監督を徹底したりルールを規定したりするなどの取り組みが必要です。労使ともにメリットの多いノー残業デーを形骸化させないよう、マネジメント層は積極的に介入し、トップダウンで定着を心がけましょう。

残業代が出ずに従業員が不満を抱く

ノー残業デーによって残業代が抑制されることは、企業にとって大きなメリットですが、従業員にとっては必ずしも好ましいことではありません。残業代を生活の足しにしている従業員は、ノー残業デーで残業代が出ないことに不満を抱く可能性があります。さらに、ノー残業デーが形骸化している職場では、サービス残業が常態化するなど、従業員の負担ばかりが増えて収入は減るという事態に陥りかねません。従業員の不満を抑制するには、ノー残業デーと同時に資格手当や業務効率化を評価する制度を導入するなどの工夫が必要です。

ノー残業デーを定着させるためには

ノー残業デーを定着させるために、まずは周知を徹底することです。一部の従業員は残業を美徳と捉えている可能性があるため、ノー残業デーの前日と当日には必ずアナウンスしてください。ポスターなどを作成し、職場に掲示するのもよいでしょう。続いては、強制的に業務を終了させる仕組みを取り入れるのもよい方法です。例えば、定時になったら自動で消灯する、PCをシャットダウンする、事業場を閉鎖するなどの方法が考えられます。管理監督者が率先して定時退社する姿勢を示すことは、配下社員にもよい影響を与えるでしょう。最後に、残業抑制による業務効率化を評価する制度を導入することも非常に効果的です。残業の抑制が人事評価につながることが明確であれば、従業員は率先してノー残業デーを推進するでしょう。

まとめ

今回はノー残業デーについて解説しました。ノー残業デーは、いわゆる働き方改革の第一歩として非常に重要な取り組みです。従来は長時間労働が当たり前でしたが、現在はワークライフバランスを重視した働き方が求められています。ノー残業デーは労使ともにメリットの大きな制度であるため、当記事を参考に導入・定着・推進を目指しましょう。

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