バリュー評価とは、従業員の業績だけでなく企業の価値観や行動指針に基づいた行動を評価する制度を指します。組織の文化醸成や一体感の向上に寄与し、成果に表れにくい貢献も正当に評価できます。一方で、評価基準が曖昧になりやすく、主観的判断による不公平感を招く可能性もあります。今回は、バリュー評価の特徴や導入手順、企業が活用する際のメリットと課題について解説します。
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企業の価値観や行動指針に基づく評価
バリュー評価とは、企業の価値観(バリュー)や行動指針に基づく人事評価です。企業の文化や目指す方向性といった概念を大目標とし、それにどれだけ合致した行動を取っているかという視点で評価が行われます。
コンピテンシー評価との違い
バリュー評価と同様、従業員の行動プロセスを対象とする人事評価に「コンピテンシー評価」があります。両方式では評価の基準をどこに置くかが異なり、コンピテンシー評価では「成果を出している優秀な従業員の行動特性」を基準とした評価が行われます。
それに対して、バリュー評価において評価される項目は「企業の価値観や行動指針との合致」であり、業務上の成果と必ずしも直接的に結びつきません。
バリュー評価が注目を集める背景
このように成果主義とは距離を置くバリュー評価が注目される背景には、ビジネスの高速化や社会的ニーズの多様化・流動化が挙げられます。これら変動の大きい外的要因の中でも企業が競争力を保つためには、短期的に移り変わる商品・サービスに偏重するよりも、長期的なビジョンやミッションといった価値観に合致する人材の確保が重要となるためです。
また企業側だけでなく人材側も、一貫性のある価値観や理念を掲げ、それに基づいた企業活動および評価を行っている企業に着目・共感するケースが増えており、バリュー評価を取り入れることは、採用活動における競争力を強化する側面もあります。
バリュー評価の導入手順
評価項目を設定する
バリューとの合致度に関して、どのような行動を対象とし、どの程度細分化された評価項目とするかは企業によって多種多様です。人事評価全体を俯瞰した際、業績評価とバリュー評価をどの程度の割合で取り入れるかによって、項目の粒度を検討する必要があるでしょう。
評価方法を設定する
バリュー評価には大別して「情意評価」「多面評価」「相対評価」の3視点からの評価が必要とされます。
- 情意評価:数値化しづらい行動をコメントなどで言語化して評価する
- 多面評価:単一の従業員に対するバリュー評価を複数名で行う事で、客観性を確保する
- 相対評価:点数化や段階付けなどを含め、他の従業員との相対的な評価も実施する
これらを意識した評価方法を設定することで、バリュー評価の実効性を高める効果が期待できるでしょう。
評価基準を統一する
バリュー評価は定性的な性質の強い評価であるため、評価基準を明文化して統一しておくことが求められます。特に、数値化の難しい項目については個人の主観が反映されやすいため、客観性が確保できるよう評価者側のガイドライン等を作成しておくとよいでしょう。
バリュー評価のメリットと課題
メリット1:価値観が合致し組織力が強化される
バリュー評価の導入は、そもそもバリューが存在しなかった企業にバリューの文化を根付かせたり、既存のバリューを更に成熟・最適化させたりといった、バリューそのものを醸成させる効果が期待できます。
また、バリュー評価により企業と従業員との価値観の一致度合いが高まれば、より長期的な視点で業務に臨める人材を増やし、結果として組織力・マネジメント力の強化につながるでしょう。
メリット2:従業員のエンゲージメントが向上する
バリュー評価は、昨今の流動的なビジネス環境における離職率の低下にも役立ちます。従業員に対して長期的な指針としてバリューを提示し、そのバリューとの合致度に対して適切な評価がなされる職場環境であれば、従業員は長く安心して働くことができるでしょう。
課題1:定量的な評価が難しく納得を得にくい
先述した通り、バリュー評価は概ね定性的であり、ポイント制・ランク制などで定量的に評価できる部分は多くありません。評価コメントの書き方・受け取り方についても属人的な部分が大きいことから、従業員の納得感を得るには複数回の実施を経て、評価制度自体をアップデートしていく必要があります。
課題2:導入と浸透には時間がかかる
課題1と関連して、バリュー評価は一朝一夕の浸透が期待できる制度とは言えません。定性的な評価に馴染みのない企業では評価方式が定着するまでに時間がかかるケースが考えられる他、評価制度の完成度についても従業員からのフィードバックを経て徐々に向上させていく必要があります。
また、売上高や成約件数といった成果とは直接関係のない、どうしても評価者の主観的な意見が含まれうる評価方式であることから、従業員間で不公平感や、評価制度への不満が生まれることも考えられます。あらかじめバリュー評価導入の意義を従業員に周知し、総じて長期的な目線で取り組む必要があるでしょう。
まとめ
バリュー評価とは企業と従業員の価値観がどれだけ合致しているかを測る評価制度であり、導入によりバリューの醸成や従業員エンゲージメントの向上、長期的な視点を持った人材の企業内外からの確保に役立ちます。一方で、業績などの定量的な評価とは異なり定性的な側面の強い評価であることから、導入にあたっては企業に応じた評価制度の構築と、場合によっては従業員からの理解を得る粘り強い取り組みが必要です。長期的なメリットと目下のデメリットを考慮したうえで、導入を検討しましょう。