定時退社とは、従業員が定められた勤務時間に達した時点で業務を終了し、退社することを指します。定時退社を実現することで、従業員の健康面やワークライフバランスの改善につながり、企業にとっても生産性の向上や従業員の定着率の向上などのメリットがあります。しかし、実際には定時退社を実現するためには、さまざまな課題があります。今回は、定時退社が行われていない原因とデメリット、定時退社を実現するための具体的な対策について解説します。
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人員不足のため
定時退社できない理由として一番にあげられるのは、人員不足です。人員が不足し、一人ひとりに割り振られている仕事量が多過ぎるために定時退社が難しくなります。この場合、企業側のマネジメント力不足が考えられ、労働者の努力だけでは定時退社の実現は困難です。まずは業務内容・業務量を可視化して、業務分担を見直しましょう。人員が不足している場合は補填する方法を検討し、職場環境の改善に取り組む必要があります。
業務効率が悪いため
定時退社が行われていない企業では、業務の効率化が進んでいない事例が多くみられます。業務効率の悪さから定時退社ができず、時間外労働で補っているといった職場もめずらしくありません。仕事量の多さが原因と思われる残業も、業務を効率化することで解消される場合もあります。まずは現状の業務内容把握・問題点の洗い出しを進め、無駄な業務を見つけて省いたり、繰り返しの作業をマクロで自動化させたり、具体的な業務改善の方法を検討しましょう。
帰りづらい職場の雰囲気
残業があたりまえとなってしまっている職場の雰囲気が、定時で帰りづらい原因となっている場合も多くあるでしょう。「上司が帰るまで帰りづらい」「定時退社は意欲がないと思われないか心配」との声もよく耳にします。働き方改革・ライフワークバランスが推進される現代において、職場の雰囲気が理由となる残業は悪しき慣習といえるでしょう。この状況を打破するためには、定時退社に対する意識改革を職場全体に浸透させる必要があります。例えば上司自ら定時退社を実践したり、ノー残業デーを導入したり、企業全体を巻き込んだ対策を行うとよいでしょう。
定時退社を行わないデメリットは
メンタルヘルスへの悪影響
定時退社ができずに長時間労働が常態化すると、メンタルヘルスへ悪影響を及ぼしかねません。厚生労働省からも「一定以上の長時間労働は心身への悪影響がある」と公表されています。またメンタルヘルスの悪化は、休職者や退職者の増加にもつながります。それにより現場に残された従業員は業務の負担が増大し、さらなる時間外労働が生まれて悪循環へ陥るでしょう。従業員の心身の健康や安定した労働環境を守るためにも、定時退社の実現へ向けて積極的に取り組む必要があります。
生産性の低下
残業により疲労が蓄積することで従業員のパフォーマンスが低下し、業務の生産性も低下します。そして生産性が低下することで時間内に業務が終わらず、さらなる時間外労働が生まれるという悪循環に陥りかねません。業務生産性の面からみても、定時退社を行わないデメリットは多いといえるでしょう。定時退社で充分な休息が与えられることにより、従業員にとってもパフォーマンスの高い働き方が可能になり、ワークライフバランスが改善されます。
企業イメージの悪化
定時退社をはじめとするワークライフバランスの推進は必須の時代です。働き方改革が推進されている現代では、ワークライフバランスの非推進は企業イメージの悪化につながりかねません。長時間労働の常態化により企業の管理能力のなさが疑われ、ステークホルダーからの信頼を損ねる要因になります。また、優秀な人材を確保するためにも、従業員を大切にしているというイメージが重要になります。定時退社が行われていない状況が常態化している企業は、すぐに自社の実態を把握し対策の検討に着手しましょう。
定時退社を実現するための対策とは
定時退社を社内に周知させる
社内に定時退社の推奨を周知していくことをおすすめします。全社展開できる「定時退社プロジェクト」「ワークライフバランス強化プロジェクト」などの立ち上げも有効です。また、管理職クラスの上司が率先して定時退社への取り組みを宣言し従業員に周知することで、職場を帰りやすい雰囲気に変えていくことができるでしょう。定時退社の現状を個別に聞取り調査するなど、従業員全員が自分事化して取り組める工夫も大切です。
人員配置を見直す
明らかな人員不足の場合は、人員配置の工夫や新しい人材の補填を検討します。新しい人材を補填するためには、現状の業務実態を把握し将来的な業務分担に向けての綿密な計画が必要です。無計画に採用活動を進めてしまうと、人材教育にかかる負担の増加など、逆に現状悪化を招く可能性もあります。定時退社の実現に向け、細心の注意を払いつつ適切な人員補填を行いましょう。
業務の効率化をする
人員配置や人員補填による対策を進めるとともに、まずは現状の従業員人数において可能な限りの業務効率化を図りましょう。まずは現状の業務内容を把握して問題点を洗い出し、解決方法を検討していきます。業務の優先順位づけなど個人でできる対策から、新規システムの導入など企業で取り組むべき対策まで、幅広く業務の効率化を検討し実現していきましょう。
まとめ
働き方改革が推進されている現代では、定時退社の重要性が増しています。定時退社の実現は、従業員のワークライフバランス改善はもちろん、企業にとっても生産性向上や企業のイメージアップなどメリットの大きい取り組みです。現状で定時退社が定着していない企業は、自社の実態を把握して問題を洗い出し、業務の効率化や人員配置の見直しなどの対策に着手することをおすすめします。また、帰りづらい職場の雰囲気が要因となっているケースも多いため、社内周知や意識共有にも注力し、だれもが定時退社しやすい職場環境づくりを実現させましょう。