同一労働同一賃金とは、正社員・非正規社員に関わらず、同じ職務内容であれば、同じ額の賃金を従業員に支払う制度のことを指します。同一労働同一賃金を導入することによって、非正規雇用労働者のやりがいやモチベーションが高まるだけでなく、求職者や職場復帰が増加し、人材不足の解消にもつながります。しかし、人件費が増加してしまうといった問題点も挙げられます。労働契約法により正社員の給与を労働者の同意なしに引き下げることは禁止されているため、同一労働同一賃金の実現のためには、非正規雇用労働者の給与を引き上げる必要があるのです。
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同一労働同一賃金とは
同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間の基本給や賞与などのあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることを禁止するルールのことです。 どの雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにすることを目的としています。具体的には、以下が統一的に整備されます。
- 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
不合理な待遇差の禁止(均衡待遇規定)とは、職務内容、職務内容・配置の変更の範囲、その他の事情の違いに応じた範囲内で、待遇を決定することです。差別的取扱いの禁止(均等待遇規定)とは、職務内容、職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合、正社員と同じ待遇をすることを言います。派遣労働者については、「派遣先の労働者との均等・均衡待遇」または「一定の要件を満たす労使協定による待遇」のいずれかを確保しなければなりません。 - 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて事業主に説明を求めることができるようになりました。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。 - 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続を実施します。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの対象です。
同一労働同一賃金が規定されている法律について
2020年4月1日に改正・施行されたパートタイム・有期雇用労働法により、同一労働同一賃金が規定されています。 大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月1日より適用されました。派遣労働者については、2020年4月施行の改正派遣労働法によって待遇是正に関する内容が新たに規定されています。現在、同一労働同一賃金の規定が全面的に施行されているため、すべての企業が適用対象です。
同一労働同一賃金が必要とされる背景
従来は、正社員として入社し、定年まで働き続ける終身雇用の働き方が主流でした。しかし、労働力人口の減少により終身雇用が崩壊しつつあります。また、働き方の多様化で非正規雇用労働者の割合は近年増加傾向にあります。しかし、正社員と比較して賃金が低い状態は変わらないままです。非正規雇用労働者の増加に伴い、賃金格差問題が表面化したことで同一労働同一賃金が必要とされるようになりました。
同一労働同一賃金のメリット
従業員のモチベーションが向上する
基本給や昇給、賞与、各種手当といった賃金に関する正社員との待遇差が解消されることで、非正規雇用の従業員のモチベーションが向上します。正社員と同じ職務内容であるにもかかわらず、非正規雇用という理由だけで賃金が低いのであればモチベーションが上がらず十分なパフォーマンスを発揮できないでしょう。モチベーションが向上することで本来のパフォーマンスを発揮でき、生産性の向上にもつながります。
従業員のスキルアップが望める
同一労働同一賃金は正社員と非正規雇用労働者との教育機会も平等に是正するものです。非正規雇用労働者の教育機会が増加することで、すべての従業員のスキルアップが望めます。非正規雇用労働者が戦力となることで職務の高度化や属人化の解消も期待できるでしょう。
企業イメージが向上する
同一労働同一賃金を導入することで、労働者の権利を尊重している企業として社内外からのイメージが向上します。 従業員にとって長く働き続けたい企業となり、人材が定着しやすくなるでしょう。採用現場においては求職者増が期待でき、優秀な人材の獲得につながります。このように、社内外からの企業イメージが向上することで、労働力不足の解消を図れるのです。
同一労働同一賃金の注意点
人件費が増加する
非正規雇用労働者の待遇差を解消することで、給与や教育コスト、福利厚生などの人件費が増加します。 大幅な人件費の増加が企業経営を圧迫する恐れがあるのです。コスト増への対策として、キャリアアップ助成金を活用すると良いでしょう。キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善等の取組を実施した事業主に対して助成するものです。
人事制度や給与体系の見直しに手間がかかる
同一労働同一賃金に対応するためには、人事制度や給与体系を見直さなければなりません。非正規雇用労働者から待遇差について質問があった場合は、企業側は合理的な説明をする必要があります。このように、就業規則の変更や、説明をするための準備などさまざまな手間がかかる点に注意しましょう。
合理的な待遇差は認められる
労働時間・日数の違いや職務の違いによる合理的な理由であれば待遇差があっても問題ありません。職務の違いのひとつとなる責任の程度とは、管理する部下の人数や、決裁権限の範囲のことです。合理的な待遇差は認められますが、非正規雇用労働者の納得がいくように説明する義務があります。 トラブルに発展しないように合理的な理由を明確にし、説明できるようにしておきましょう。
まとめ
今回は、同一労働同一賃金について解説しました。正社員と非正規雇用労働者との間の待遇差を解消することで、従業員のモチベーションやスキル、企業イメージなどの向上が期待できます。一方で、人件費の増加や制度の見直しなど企業の負担が大きくなる点は課題です。まずは自社の職務における配置状況を把握し、導入に向けて人事制度や給与体系を整備しましょう。