給与形態で異なる、最低賃金の計算方法とは?

2020年7月3日

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最低賃金は、雇用形態を問わず賃金を支払う際に守らなくてはならないルールであり、都道府県別または産業別に定められています。賃金が日給、月給で定められている場合などには、最低賃金の計算に労働時間が必要になるので、日頃から勤怠管理に注意を払いましょう。今回は、最低賃金の意味や種類、給与形態別の計算方法や事例について解説していきます。

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最低賃金とは

「最低賃金」は、使用者である企業が労働者へ支払わなくてはならないと定められている時給(1時間あたりの賃金)の最低金額のことです。 仮に労働者と使用者双方の合意の上で最低賃金額より低い賃金を定めていたとしても、それは法によって無効となります。この場合、「最低賃金額と同額の定めをしたもの」と解釈され、使用者は定められた最低賃金額との差額分を支払わなくてはなりません。この最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があり、それぞれ地域の物価・業種の特性を加味して定められ、毎年10月に改定されています。

地域別最低賃金

地域によって物価などの事情がそれぞれ異なっていることから、地域ごとの実情を加味した上で「地域別最低賃金」が決定されています。これは雇用形態・職種に関わらず、各都道府県の企業で働く全ての使用者・労働者に適用されるもので、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない使用者には、最低賃金法に則って50万円以下の罰金が科せられます。
また、使用期間中や心身に障害がある場合など、一般の労働者より著しく業務に従事する能力が低い場合には特例があります。一律に最低賃金を適用することで雇用機会を狭めてしまう恐れがあるため、使用者が都道府県労働局長からの許可を得ることを条件に、個別に最低賃金を減額することが可能です。

特定最低賃金

労働者・使用者による申し出に基づき、地域別最低賃金よりも高い水準の最低賃金を定める必要性を最低賃金審議会が認めた特定の産業・職業へ個別に定めたものが「特定最低賃金」です。適用される対象は該当産業の基幹的な業務に従事する労働者・使用者で、18歳未満や65歳以上のいわゆる生産年齢ではない労働者や、雇用後一定期間未満の研修期間中の労働者、軽易業務を行う労働者については適用対象外となります。
また、地域別最低賃金と特定最低賃金がともに適用対象となる労働者には、より高い方の最低賃金額以上の給与を支払う必要があります。特定最低賃金が適用されているにも関わらず、これよりも少ない賃金額しか支払わない場合には、労働基準法に則り30万円以下の罰金が使用者へ課せられることになります。

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給与形態別の計算方法

地域最低賃金・産業別に設けられた特定最低賃金と実際の時給を比較することで、自身の給与が適正かどうかを確かめることができます。ここでは事例を交えながら給与形態別の計算方法について解説していきます。

日給制

1日単位で賃金が定められている「日給制」の場合には、1日の所定労働時間を利用して時給を割り出すことができます。あらかじめ日額で設定されている特定最低賃金が適用される場合には、日給そのものを日額の特定最低賃金と比較して調べることも可能です。まずはどちらの最低賃金が適用されるのかを割り出し、双方の時給を比較しましょう。
例えば石川県の金属製品製造業では、日額6,102円の特定最低賃金が設定されています。これを時給に直すと763円となりますが、石川県の地域別最低賃金は832円ですので、この場合には地域別最低賃金が適用されることになります。
金属製造業で日給制・1日8時間労働であれば、832円×8時間=6,656円が日給の最低賃金ということになります。自身の日給とこの金額を比較することで、定められた最低賃金よりも多く給与が支払われているかどうかを確かめることができるでしょう。

月給制

月給制の場合には各種手当が付与されているため、まずは支給額から最低賃金の対象とならないものを除きましょう。例えば基本給・職務手当・通勤手当・時間外手当が支給されている場合であれば、基本給・職務手当のみが対象となります。
基本給120,000円・職務手当30,000円・年間所定労働日数250日と仮定すると、最低賃金の対象となる額は合算で150,000円です。これを時給へ換算すると(150,000円×12ヶ月)÷(250日×8時間)で900円となります。勤務先が福島県の情報通信機械器具製造業であった場合、特定最低賃金の833円が適用されるため、「900円>833円」で最低賃金額以上となっていることが分かります。

完全歩合制の場合

完全歩合制の場合の時給換算方法について、例を元に解説します。
ある企業では、当月の給与額が148,950円、うち歩合給は138,000円でした。この企業の所定労働時間は1ヶ月平均で170時間、当月の時間外労働は30時間です。時間外割増料金・深夜割増賃金は対象とならないため計算の際には除外されます。
最低賃金の対象となるのは歩合給の138,000円なので、これを所定労働時間と時間外労働時間の合算で割ると138,000円÷(170+30)時間で690円となります。
これが広島県のタクシー業者の給与であると仮定すると、旅客輸送業には特定最低賃金が設けられていないため、地域最低賃金871円が適用されます。両者を比較すると「690円<871円」となっており、規定の最低賃金を大きく下回ってしまっていることが分かります。

複数の給与形態の組み合せの場合

複数の給与形態の組み合わせから時給を割り出すには、給与形態ごとの時給額を換算した上でそれらを合算する必要があります。

  • 日給+月給の場合
  • 基本給が日給制で1日5,500円・各種手当が月給制で45,000円の場合には、まず手当とされているものから最低賃金の対象外となる項目を除きます。今回は職務手当35,000円・通勤手当15,000円と仮定し、職務手当のみが対象です。
    基本給(日給)は5,500円÷8時間/日で時給680円。手当(月給)は(35,000円×12ヶ月)÷(250日×8時間)で時給210円となります。日給と月給の時給を合算すると680円+210円=860円です。
    仮にこの給与が静岡県の加工紙製造業に勤める人のものであった場合、静岡県の地域最低賃金は885円・加工紙製造業の特定最低賃金は786円となるため、地域最低賃金が適用。つまり「890円>885円」で、最低賃金よりも高い給与となっていることが確認できます。

  • 固定給+歩合給の場合
  • ある月の総支給額が192,238円で、その内固定給が121,000円、歩合給が46,000円。企業が定める1年間の1ヶ月平均所定労働時間は月170時間で、この月の時間外労働は30時間でした。
    まず固定給を1ヶ月平均所定労働時間で割ると121,000円÷170時間=712円と算出されます。歩合給をこの月の総労働時間で割ると42,000円÷(170時間+30時間)=230円なので、固定給と歩合給の時給を合算して、712円+230円=942円が時給です。
    仮にこの企業が滋賀県のタクシー会社であった場合、旅客運輸業には特定最低賃金が設定されていないため地域最低賃金866円が適用されます。先ほど割り出した時給と比較すると「942円>866円」となり、最低賃金以上の給与となっていることがわかります。

まとめ

「最低賃金」は最低賃金法に則って定められた、いわゆる「時給」の最低金額です。都道府県単位ですべての労働者に最低限の賃金を保障する「地域別最低賃金」と、関係労使からの申し出によって産業・職業ごとに適用される「特定最低賃金」の2種類が存在します。自身の給与が最低賃金以上となっているかどうかは時給換算をして最低賃金額と比較することで調べることができますが、特定最低賃金が指定されている産業・職業については、地域別最低賃金と比較して金額の高い方が適用となるため注意が必要です。

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