給与改定があった場合、給与改定通知書を発行する必要がありますが、給与明細でこれを通知したこととする方法が一般的です。しかし、明細のみで通知すると、特に減給の際にトラブルが生じる可能性もあるため、必ず発行するようにしましょう。今回は、給与改定通知書の概要や発行条件、給与改定時に生じうるトラブル、給与改定通知のポイント、減給の際の注意点について解説します。
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給与改定通知書とは
給与改定通知書は、企業が従業員に対して賃金額の変更を通知する際に発行する書面です。賃金の変更内容や新賃金の適用開始日などが記載されており、決まった様式はありません。給与明細が給与の変更通知を兼ねる場合もありますが、従業員に対して給与が変更されたことを正式に伝達する際は、給与改定通知書を用います。
給与改定通知書の発行条件
給与改定通知書は、従業員の給与額に変更が生じたときに発行されます。ただし、労働基準法において労働条件の書面通知が義務付けられているのは、従業員の雇い入れ時のみです。従って、企業にとって給与改定通知書の発行は必須ではないのです。そのため、昇給する場合は給与改定通知書を発行せず、支給日前に給与明細で通知を行っている企業も多く存在します。一方、減給時に経緯を書面で残したい場合や、従業員から給与変更の証拠書を求められた場合などは、給与改定通知書を発行する必要があります。
給与改定時に生じるトラブル
減給など、従業員にとって不利益な労働条件の変更が行われるとトラブルが生じる可能性があります。そもそも給与などの労働条件は、企業と従業員の双方の合意によって定められるのが原則で、減給などの不利益な変更はできません。ただし、変更に合理性があり、従業員からの同意が得られれば、不利益な変更であっても行うことができます。そのため、変更の背景などを従業員に説明しても納得してもらえない場合は、給与改定をスムーズに進められないため、注意しましょう。
給与改定通知のポイント
従業員に説明をする
給与改定が従業員与える影響は大きいため、企業側と従業員で認識を揃えなければなりません。そのため、給与改定の通知を行う際は、給与改定通知書を一方的に発行するだけでなく、従業員に対して事前に丁寧に説明しましょう。特に給与の減額を行う場合は、トラブルを回避するためにも、事実関係を書面で残すと同時に、口頭で補足説明を行うことが大切です。
給与改定する理由を開示する
給与改定について従業員に納得してもらうために、改定の経緯や必要性などを開示しましょう。特に給与を減額する場合は、合理的で納得できる理由が必要です。企業の状況や従業員のパフォーマンスなどを共有し、事実に基づいた説明で、理解を得られるようにしましょう。例えば、新型コロナウイルスの影響で給与改定が必要なのであれば、企業の売上や資産状況の変化など具体的な情報を提示する必要があります。
従業員から同意書をもらう
給与改定を通知する際は、従業員と同意書を交わすことで、思わぬトラブルを回避できます。特に、減給などの不利益な変更が生じる際は、従業員からの同意が欠かせないため、目に見える形で残しておくと安心です。同意書は従業員が給与改定の内容を確認し承諾したことを客観的に示す資料となるため、トラブルに発展した際には役に立つかもしれません。
減給を行う際の注意点
就業規則に減給に関して明記する
就業規則には、給与規定などの給与や賃金に関するルールを必ず記載しなければなりません。給与規定の項目に、減給についての基本的な考え方や条件が記載されているか確認しましょう。ルールが曖昧だったり不十分だったりする場合は、見直すことが必要です。
減給の限度額を確認する
懲戒処分による減給を行う際の限度額について、労働基準法第91条では、「就業規則で労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」と定めています。ただし、この規定はすべての減給のケースに適用されるわけではなく、従業員との合意による減給や、管理職の降格による減給などについては適用されません。減給を行う際は、法律上の限度額の適用があるかどうか確認し、適用される場合は違反しないように注意しましょう。
書面で減給の証拠を残す
減給は従業員の労働条件の大きな変化ですので、口頭での伝達だけでなく、減給の事実を書面で残しましょう。書面で記録が残っていない場合、後になって従業員との認識の相違が原因となって、トラブルに発展しかねません。具体的には、給与改定と同時に再度締結した雇用契約書や、減給についての同意書、従業員への説明の議事録などの書類はひとまとめにして保管しておくことが重要です。
まとめ
従業員の労働条件の変更は慎重に行わなくてはなりません。特に減給など、従業員にとって不利益な変更を行う際は、給与改定通知書を発行するなど、丁寧な対応を心掛けましょう。書類の発行や、丁寧な説明をすることは、忙しい業務のなかで負担に感じるかもしれませんが、労使間のトラブルを防ぎ、企業としての信頼感にも繋がるでしょう。